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「もう一つのヨーロッパ ― 東欧革命から20年」
北海学園大学法学部・2010年度第2学期
(14:20~15:50,17:50~19:20)

福田 宏 h-fukuda@hgu.jp
(hfukuda@slav.hokudai.ac.jp)

●試験・レポートに対する評価 (2011年2月7日記)
履修者は160名 (1部127名、2部33名)。試験欠席者は1部・2部併せて68名。成績評価の対象者は92名。その内、優 (A) が19名 (20.7%)、良 (B) が53名 (57.6%)、可 (C) が16名 (17.4%)、不可 (D) が4名 (4.3%) であった。シラバスで告知したとおり、成績評価はレポート40%、試験60%で行ったため、レポートを提出しなかった場合には、試験で50点以上 (満点は60点) 取らなければ単位を取ることができない。試験のみを受けた者4名の内、50点以上の成績を収めた履修者は皆無であったため、この4名については「不可」(D) とした。レポートを提出したにもかかわらず試験を受験しなかった者については、レポートだけで50点以上取得することはできないため、全員「欠席」(E) とした。なお、レポートと試験の両方を受けた者については、全員「可」以上の成績としている。また、もう少しで「優」に届く履修者、或いは「良」に届く履修者の中で、出席回数が多い者については若干の加点を行った。
 1月18日の講義で説明したように、レポートについては若干厳しめの採点を行った。レポート提出者90名の内、10点満点で採点したところ (採点基準については講義中に説明済み)、優 (10~8点) が1名、良 (7~5点) が55名、可 (4~3点) が32名、不可 (2~0点) が2名であった。レポートで高得点を収めた者が、(例外はあるものの) 試験でも優れた答案を提出する傾向が見られた。最終的な成績評価においては、「優」取得者が概ね2割程度になるよう、採点基準の調整を行っている。

●授業のねらい
 (授業のテーマ)
旧社会主義圏の中東欧諸国が民主化を開始して早くも20年の歳月が経過した。これらの国々は2004年にEUに加盟し、欧州への「回帰」を果たしたが、昨今の経済危機により大きなダメージを被り、旧西側諸国との格差が再び露わとなってきている。この講義では、主としてチェコ、スロバキア、ポーランド、ハンガリーのいわゆるヴィシェグラード4カ国に着目し、中東欧がどこに向かうのかについて考えてみたい。

 (学習目標)
1. 歴史・文化・地理的条件が似通った4カ国を比較検討することにより、比較政治学的視点を養う。
2. 小国の視点からEUを検討することにより、欧州政治の複雑性を理解する。
3. 歴史文化的側面にも配慮することにより、中東欧諸国の政治をより深く理解できるようにする。

●授業計画(講義資料へのリンク:バスワードについては講義中に通知する)
  1. はじめに ― ヴィシェグラード4カ国の概観 (9月21日) [配布資料]
  2. 東欧革命(1989年)とは何だったのか (9月28日) [配布資料]
  3. バルカンは何故戦わねばならなかったのか ― 旧ユーゴ紛争 (10月5日) [配布資料]
  4. 中欧の民主化は成功したか ― 欧州化と民主化の相関関係 (10月19日) [配布資料]
  5. 戦間期における民主化の「実験」 ― 「例外」としてのチェコスロヴァキア? (10月26日) [配布資料]
  6. ハプスブルク帝国の遺産と近代 (11月2日) [配布資料]
  7. 環境ビジネスの興隆 ― 欧州は京都議定書で得をしたのか (11月16日) [配布資料]
  8. EU拡大と中欧の経済成長 ― ユーロの行方 (11月30日)[配布資料]
  9. 中東欧のタブー? ― ロマ問題の構造と問題解決の試み (12月7日)[配布資料]
  10. 中欧と欧州統合 ― 冷戦後におけるヨーロッパの再検討 (12月14日) [配布資料]
  11. 中欧の歴史問題 ― ポーランドとドイツ、チェコとドイツ、スロヴァキアとハンガリー (12月21日)[配布資料]
  12. ★補講★ 映画鑑賞《コーリャ ― 愛のプラハ》1996年、チェコ (12月25日2講目) [配布資料なし]
  13. ロシアの脅威とエネルギー ― ガス・パイプラインの国際政治学 (1月11日) [配布資料]
  14. おわりに ― 中欧の比較政治に向けて & レポートに対するコメント & EUの東方拡大と共通農業政策(CAP) (1月18日)[配布資料]

●準備学習の内容
価値観が異なる国の政治を学ぶためには、映画や小説などによって人々の生活が見える「資料」に触れることも必要である。可能であれば、実際にその国を訪れてみることも良い経験になるだろう。受講に当たっては、授業で配布する文献一覧などを元に、可能な限り広い範囲の「資料」に触れるようにして欲しい。

●評価方法・基準
定期試験(60%)とレポート(40%)で評価する。

●レポート課題
  • 締め切りは2011年1月11日 (火)。授業中又は法学部事務に提出。メールによる提出は認めない。
  • 1000字以上。手書きの場合は400字詰め原稿用紙を使用 (鉛筆・ボールペン・万年筆いずれも可)。下記の文献より最低1冊を選択し、それについて論じること。
  • 様式自由。ただし、(1) 何故その文献を選んだのか、(2) 文献の要約、(3) 文献に対する批評、の3点を含むこと。
●レポート用文献一覧
  1. 大津留厚『ハプスブルクの実験 ― 多文化共存を目指して』中公新書、1995年。図書館有り。絶版だが、春風社が2007年に刊行した『増補改訂 ハプスブルクの実験 ― 多文化共存を目指して』は入手可能。
  2. ジャック・リデー『中欧論 ― 帝国からEUへ』文庫クセジュ、2004年。図書館有り。生協発注済み。
  3. 佐藤優『国家の罠 ― 外務省のラスプーチンと呼ばれて』新潮文庫、2007年。図書館には2005年に刊行された単行本有り。生協発注済み。
  4. 水谷驍『ジプシー ― 歴史・社会・文化』平凡社新書、2006年。図書館に受入を要請済み。生協に入荷済み。
  5. 日本経済新聞社編『ユーロが危ない』日経ビジネス文庫、2010年10月。図書館に受入を要請済み。生協に入荷済み。
  6. 田中素香『ユーロ ― 危機の中の統一通貨』岩波新書、2010年11月。図書館受入予定。生協に入荷済み。
  7. 高木徹『ドキュメント 戦争広告代理店 ― 情報操作とボスニア紛争』講談社文庫、2005年。図書館には2002年に刊行された単行本有り。生協に入荷済み。
  8. 広瀬佳一『ヨーロッパ分断1943 ― 大国の思惑、小国の構想』中公新書、1994年。図書館有り。絶版。
  9. 林忠行『中欧の分裂と統合 ― マサリクとチェコスロヴァキア建国』中公新書、1993年。図書館有り。絶版。
  10. 内田樹『私家版・ユダヤ文化論』文春新書、2006年。図書館に受入を要請済み。生協に入荷済み。
  11. 進藤榮一『東アジア共同体をどうつくるか』ちくま新書、2007年。図書館に受入を要請済み。生協に入荷済み。

●参考文献一覧(作成途中 2011年1月17日現在)
  • 全体に関わるもの・基本書・参考書
    • 馬場康雄、平島健司編『ヨーロッパ政治ハンドブック[第2版]』東京大学出版会、2010年、図書館発注予定
    • 網谷龍介、伊藤武、成廣孝編『ヨーロッパのデモクラシー』ナカニシヤ出版、2009年、図書館発注予定
    • 羽場久美子、小森田秋夫、田中素香編『ヨーロッパの東方拡大』岩波書店、2006年、図書館有り
    • 薩摩秀登編著『チェコとスロヴァキアを知るための56章』明石書店、第2版、2009年、図書館発注予定
    • 羽場久浘子編著『ハンガリーを知るための47章』明石書店、2002年、図書館有り
    • 広瀬佳一編著『ウィーン・オーストリアを知るための50章』明石書店、2002年、図書館有り
    • 渡辺克義編著『ポーランドを知るための60章』明石書店、2001年、図書館発注予定
    • 柴宜弘編著『バルカンを知るための65章』明石書店、2005年、図書館有り
    • 南塚信吾編『ドナウ・ヨーロッパ史』山川出版社、1999年、図書館有り
    • 伊東孝之、井内敏夫、中井和夫編『ポーランド・ウクライナ・バルト史』山川出版社、1998年、図書館有り
    • 柴宜弘編『バルカン史』山川出版社、1998年、図書館発注予定
    • ジョゼフ・ロスチャイルド『現代東欧史:多様性への回帰』共同通信社、1999年、図書館有り
  • 欧州統合に関するもの
    • 遠藤乾編『ヨーロッパ統合史』名古屋大学出版会、2008年、図書館有り
    • 遠藤乾編『原典ヨーロッパ統合史:史料と解説』名古屋大学出版会、2008年、図書館有り
    • 遠藤乾、板橋拓己編『複数のヨーロッパ』北海道大学出版会、2011年4月刊行予定、図書館注文予定
    • 広瀬佳一『ヨーロッパ分断1943:大国の思惑、小国の構想』中公新書、1994年、図書館有り
    • 【番外編】進藤榮一『東アジア共同体をどうつくるか』ちくま新書、2007年、図書館に受入を要請済み
    • 【番外編】シュミット村木眞寿美編訳『クーデンホーフ光子の手記』河出文庫、2010年、図書館発注予定
    • 【番外編】マーティン・バナール『黒いアテナ:古典文明のアフロ・アジア的ルーツ 第1巻:古代ギリシアの捏造 1785-1985』新評論、2007年、図書館発注予定
  • ハプスブルク帝国(末期)に関するもの
    • ロビン・オーキー『ハプスブルク君主国 1765-1918:マリア=テレジアから第一次世界大戦まで』NTT出版、2010年、図書館発注予定
    • 大津留厚『ハプスブルクの実験:多文化共存を目指して』中公新書、1995年、図書館有り(絶版)
    • 大津留厚『増補改訂 ハプスブルクの実験:多文化共存を目指して』春風社、2007年、図書館発注予定(上記文献の改訂版)
    • ハンス・コーン『ハプスブルク帝国史入門』恒文社、1982年、図書館有り
    • アラン・スケッド『図説 ハプスブルク帝国衰亡史:千年王国の光と影』原書房、1996年、図書館なし
    • スティーヴン・ベラー『フランツ・ヨーゼフとハプスブルク帝国』刀水書房、2001年、図書館有り
    • カール・E. ショースキー『世紀末ウィーン:政治と文化』岩波書店、1983年、図書館有り
  • ユーゴ紛争に関するもの
    • 佐原徹哉『ボスニア内戦:グローバリゼーションとカオスの民族化』有志舎、2008年、図書館有り
    • 月村太郎『ユーゴ内戦:政治リーダーと民族主義』東京大学出版会、2006年、図書館有り
    • 高木徹『ドキュメント 戦争広告代理店:情報操作とボスニア紛争』講談社文庫、2005年、図書館有り(単行本)
    • 多谷千香子『「民族浄化」を裁く : 旧ユーゴ戦犯法廷の現場から』岩波新書、2005年、図書館有り
    • 久保慶一『引き裂かれた国家 : 旧ユーゴ地域の民主化と民族問題』 有信堂高文社、2003年、図書館発注予定
    • 越村勲、山崎信一『映画「アンダーグラウンド」を観ましたか? : ユーゴスラヴィアの崩壊を考える』彩流社、2004年、図書館なし
    • 最上敏樹『人道的介入:正義の武力行使はあるか』岩波新書、2001年、図書館有り
  • 歴史問題、教科書問題に関するもの
    • 近藤孝弘『自国史の行方:オーストリアの歴史政策』名古屋大学出版会、2001年、図書館なし
    • 近藤孝弘『国際歴史教科書対話:ヨーロッパにおける「過去」の再編』中公新書、1998年、図書館有り
    • フレデリック・ドルーシュ総合編集『ヨーロッパの歴史:欧州共通教科書』第2版、東京書籍、1998年、図書館有り
    • ヴォルフガング・ヴィッパーマン『議論された過去:ナチズムに関する事実と論争』未来社、2005年、図書館有り
    • 木佐芳男『<戦争責任>とは何か:精算されなかったドイツの過去』中公新書、2001年、図書館有り
    • 藤原帰一『戦争を記憶する:広島・ホロコーストと現在』講談社現代新書、2001年、図書館なし
    • 佐藤卓己『八月十五日の神話:終戦記念日のメディア学』ちくま新書、2005年、図書館なし
    • 佐藤卓己、孫安石編『東アジアの終戦記念日:敗北と勝利のあいだ』ちくま新書、2007年、図書館なし
  • ロシア、エネルギー問題に関するもの
    • 塩原俊彦『パイプラインの政治経済学:ネットワーク型インフラとエネルギー外交』法政大学出版局、2007年、図書館なし
    • 酒井明司『ガスパイプラインとロシア』(ユーラシア選書)東洋書店、2010年、図書館なし
    • 酒井明司『ガスプロム:ロシア資源外交の背景』(ユーラシア・ブックレット)東洋書店、2007年、図書館有り
    • 田畑伸一郎『石油・ガスとロシア経済』北海道大学出版会、2008年、図書館有り
    • 武田善憲『ロシアの論理:復活した大国は何を目指すか』中公新書、2010年、図書館有り
    • 岩下明裕『北方領土問題:4でも2でも、0でもなく』中公新書、2005年、図書館有り
  • 農業およびEU共通農業政策(CAP)に関するもの
    • 村田泰夫『戸別所得補償制度の衝撃:「作らせない農政」から「作らせる農政」への転換』農林統計協会、2010年、図書館なし
    • 篠原孝『EUの農業交渉力:WTO交渉への戦略を練る』農山漁村文化協会、2000年、図書館なし
    • ローズマリー・フェネル『EU共通農業政策の歴史と展望:ヨーロッパ統合の礎石』農山漁村文化協会、1999年、図書館なし
    • 農業問題研究学会編『グローバル資本主義と農業:世界経済の現局面で農業問題研究の「現代性」と意義を問う』筑波書房、2008年、図書館有り
    • 『民主党農政 : 政策の混迷は解消されるのか』(日本農業年報 56号) 農林統計協会、2010年、図書館なし
    • 【参考】浅川芳裕『日本は世界5位の農業大国:大嘘だらけの食糧自給率』講談社+α新書、2010年、図書館なし
  • ロマに関するもの
    • 水谷驍『ジプシー』平凡社新書、2006年、図書館に購入要請済み
    • 関口義人『ジプシーを訪ねて』岩波新書、2011年
    • イザベル・フォンセーカ『立ったまま埋めてくれ:ジプシーの旅と暮らし』青土社、1998年、図書館なし
    • コラム・マッキャン『ゾリ』みすず書房、2008年、図書館有り
    • 加賀美雅弘『「ジプシー」と呼ばれた人々:東ヨーロッパ・ロマ民族の過去と現在』学文社、2005年、図書館なし
    • イアン・ハンコック『ジプシー 差別の歴史と構造:パーリア・シンドローム』彩流社、2005年、図書館なし
    • デーヴィッド・クローウェ『ジプシーの歴史:東欧・ロシアのロマ民族』共同通信社、2001年、図書館なし
    • アンガス・フレーザー『ジプシー:民族の歴史と文化』平凡社、2002年、図書館有り
    • ウィル・キムリッカ『多文化時代の市民権:マイノリティの権利と自由主義』晃洋書房、1998年、図書館有り
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